腎瘻チューブによる緊急的な尿路確保

近年、猫の結石による尿管閉塞が増加しており、外科手術が必要なケースが多くなっています。特に重度高カリウム血症を伴う高クレアチニン血症の場合には緊急的な尿路確保が必要で、日本動物高度医療センターでは腎瘻チューブの設置を行うことで緊急対応しています(図1)。

図1 胃瘻チューブ設置後の血中Cre値の変化
※2018年日本獣医麻酔外科学会での報告より

尿管再閉塞率の低い手術「尿管膀胱新吻合」

根本的な上部尿路確保法としては、尿管切開、尿管膀胱新吻合、尿管ステント、SUBシステムなどが治療の選択肢として挙げられますが、当センターでは尿管膀胱新吻合を第一の選択としています。その理由としては、尿管膀胱新吻合は他の術式と比較して手術の難易度は上がるものの、周術期の手術改善率は98.8%と高く、中長期的な経過においても尿管再閉塞率が低いためです(表1)。

表1 日本動物高度医療センターにおける各術式の比較
※1 2021年日本獣医麻酔外科学会の報告より
※2 2016年日本獣医腎泌尿器学会での報告より

当センターにおける尿管膀胱新吻合の術式としては、遠位尿管を切断することなく、尿管の側面と膀胱を吻合する膀胱外法を行っています(図2、3)。

図2 尿管膀胱新吻合(膀胱外法)の模式図
① 尿管を切開して結石を摘出し、尿管と吻合する部位で膀胱にも切開を加える
② 遠位尿管を切断せず、尿管切開部と膀胱切開部を縫合する
③ 縫合完了後の吻合部位
図3 尿管膀胱新吻合(膀胱外法)の手術

尿管の閉塞部位が腎臓に近い位置だった場合でも膀胱を頭側に牽引し、腎臓もしくは腹壁に固定することができるため、どの位置の尿管閉塞に対しても対応可能です。高倍率の視野での手術が必要となる場合もあり、症例によっては手術用顕微鏡を使用し、より正確な手術を行っています(図4)。

図4 手術用顕微鏡を使用した施術の様子
執筆者

泌尿生殖器・消化器科 科長

山﨑 寛文